top of page

​≪業務について11

>>トップページ

>>行政書士とは

>>業務について10

>>業務について11(この頁)

>>無料相談室

≪ご挨拶≫

申請・相続・遺言・離婚・後見・終活など、書類や手続きは当事務所にお任せ下さい。相談・助言・見積り無料。電話0562-46-4467。留守録の折は、お名前とご用件をお願いします。または無料相談室まで。(2023/11/14行政書士西村伸)

 

非常に重要地震や津波に負けない町づくり/安価な耐震改修や建て替えの工法など、行政や大学は市民や企業に情報発信を!2024/02/03
ドラレコに残された倒壊の瞬間・リアカメラには津波
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000335446.html
テレビ朝日(ANN)2024/02/02付
能登半島地震の発生直後、大きな揺れによって住宅が崩れる様子を捉えた映像。この後、津波の映像が流れます。ストレスを感じる場合は視聴を控えて下さい。
石川県珠洲市を走る車。運転していた女性は直前に震度5強の地震が来たため、車を道路脇に止めます。すると、地面が横に大きく揺れ始め、車内に悲鳴が響きます。時間は珠洲市で震度6強を観測した午後4時10分です。大きく揺れる電線。揺れが始まって約20秒後には奥の住宅が倒れ、砂ぼこりが上がります。さらに、右側の住宅も屋根から大きく崩れます。次々と倒れる住宅。画面は砂ぼこりで真っ白に

 

車は介護施設の送迎をしていて、運転していた女性を含めて7人が乗っていました。車内カメラにはすぐ横の建物が崩れる様子も…。「もう立っていられない。しゃがむこともできなくて、一緒に支えあって踏ん張っていたんですけれど。そのうちメキメキメキメキと家が倒壊していって」。さらに、車の後方のドライブレコーダー。歩道にいた人は自転車を支えられず倒れてしまいます。その直後、左の白い建物が崩れ、1階部分が潰れてしまいます。それでも続く揺れ。画面右側の住宅も前後に大きく揺れます。道路と敷地の境界がひび割れる瞬間も。「メキメキと折り重なって砂煙というか、揺れが長い。いつ収まるんだろうという感じ」。地震から3分すぎには住宅街に警報が鳴り響きます。大津波警報です。自転車の人も住民が逃げてくるのを見て、反対方向に逃げ出します。高齢者をおぶって避難させようとしますが、中々うまくいきません。「頑張って歩こうといっていたら大津波警報の放送がかかった。絶対津波が来ると思って必死に上がりました。現実的じゃない感じでした」。そして、地震が起きてから30分以上が経った午後4時47分の映像です。車は津波にのみ込まれていきます

 

建築の安全や防災を研究する大阪工業大学工学部建築学科の吉村英祐特任教授に映像を見てもらいました。「一番注目したのは地震の揺れの継続時間が非常に長い揺れる回数が多いので、接合部が緩み耐え切れず倒壊した」。映像では木造とみられる住宅が複数、倒壊しています。「揺れの周期が木造に一番危険な周期1秒から2秒で揺れていた可能性がある」。木造家屋に最も被害が出やすいとされる周期1秒前後の揺れが長く続いたとみられます。「2階建ての建物は1階が崩壊するのが一般的。右側の2軒については1階が先行して崩壊している」。一方、左奥の建物は2階部分から崩れているように見えます。「2階の壁の量が少ないとか大広間みたいなのがあるとか、そういうことが考えられるので、ただ1階と2階の崩壊する時間差はそんなにない。数秒の差で2階が先に崩壊したように見える。見た感じ現在の耐震基準、あるいはそれに近い基準で建てられたものは、大きく揺れても倒壊には至っていない。加速度も大変大きい。2800ガルを超えているので、根本的な耐震性を高めないと耐えられないレベルの地震動だ」。

 

(私から補足)
私も息を呑み、思わず目を覆いました。いずれ、わが地方にも映像以上の地震と津波が襲うと思うと、とても助かるまいと胸が苦しくなります。しかし、座して死を待つばかりでは、この度犠牲になった方々も浮かばれません。自治体や研究機関、各家庭において「災害が起こった後」に備えるのはもちろん(昨日、能登の各首長と国中央との連絡がつかず、災害の程度・支援物資の要望を把握できず初動が遅れたとの報道がありました。地上のインフラ無しで電話やインターネットができる設備を各役場に1基ずつ置くこと等の対策が急務です)、「災害が起こる前」に出来ることが無いか、自治体や研究機関は、市民や建設業界に技術や情報を広報やHPでもっと発信すべきだと思います。(耐震補修や建て替えで検索して、行政や大学のHPにヒットしにくい現状では、とても心許ないことです)。

非常に重要トラブル防止には、大事なことは最初に話し合って、合意したことを文書にしてお互いサインすること。法律的にはこれ一つしかない2024/01/30

有名な漫画家の方が、制作側と原作のメインテーマの解釈などをめぐって紛争になり、自ら命を絶つという痛ましい事件が起こりました。以前から原作者と制作側の紛争は断続的に起きています法律的には、トラブル防止には、「最初に」「全当事者と」「細部まで」「とことん協議(話し合い)」して、「契約書・合意書」「重要事項(譲れないこと)」「誰がどう読んでも解釈に違いが出ないように」「はっきり簡潔に明記する」ことが非常に大事です何かあった場合、その契約書・合意書に従って、迅速かつ平穏にトラブルを解決できます。万が一、相手が契約書・合意書の条項に従わない場合(契約書・合意書に則った契約解除や損害賠償の求めに応じない等)は、もちろん裁判になりますが、「被告は契約書・合意書の第何条に違反する!」と明確に主張できるので、(弁護士等に依頼するまでもなく)裁判所もすぐに味方してくれます。元々裁判所は白か黒かだけを判断するので、グレーの場合は(弁護士を付けても)味方してくれません(この知識は行政書士など法律系試験にも役立ちます)。何か大事なことを取り決めるときは、必ず法律文書にすること。それでもトラブルになった場合は弁護士、トラブルになりそうな場合は司法書士や行政書士があなたの力になります。どうか、お忘れなきよう

被災から一月ボランティア派遣(日帰り/被災地近隣に住む有志から)が始まる/すでに全国から1万5千人の応募2024/01/29
石川県、ボランティアを被災地に派遣へ/家財の片付けなど
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240127/k10014336481000.html
NHKニュース2024/01/27付
能登半島地震の被災者を支援するため、石川県庁では災害ボランティアの募集を1月6日から始めています。石川県庁は27日から、県に登録したボランティアを被災地に派遣することになりましたボランティアは志賀町に45人、七尾市に20人、穴水町に15人の、計80人の有志が27日から派遣され、被災した住宅で家財の片付けを行ったり、災害廃棄物の仕分けなどの作業を進めることにしています。被災地では宿泊施設が不足していることなどから、当面は金沢市内と現地をバスで往復しながら、日帰りでボランティアを派遣するということです(注:県庁のある金沢市に集合、バスで県内の各市町村へ派遣、夕方にバスで金沢市に帰還)。

 

七尾市、志賀町、穴水町のボランティアセンターによりますと、すでに住民などからボランティア派遣の要望が寄せられているということです。このうち、七尾市ではこれまでに300件近い要望が寄せられ、割れた食器やガラス、瓦など家の片付けの手伝いを依頼する内容が多いということです。一方、輪島市や能登町などでは、ボランティアについて、住民にどのような支援が必要か調査を行っています(注:県北部は被害が大きく、土砂崩れ発生など、活動中の安全が懸念されることから、現時点でのボランティア派遣は見送ったと思われます)。

 

石川県によりますと、現地で対応できる自治体などの職員の数が十分ではなく、一日に受け入れられるボランティアの人数にはかぎりがあるとしています。また、県はボランティア活動について道路などのインフラが復旧していないことから大きな渋滞につながり、緊急車両が通れなくなる可能性があること、各自治体の受け入れ態勢が整っていないことから、個別での活動は控え、県に事前登録を行うよう呼びかけています25日午後2時の時点で▽県内のおよそ4000人▽県外の1万500人の、合わせておよそ1万4500人が事前登録を行っているということです。

 

今回の地震の被災地などで活動するボランティアについて、NHKが26日の時点での受け入れ状況をまとめました。(ボランティアは県庁以外に、各市町村役場、社会福祉協議会が募集しています。いずれの場合も事前登録をお願いします)
▽珠洲市では県の特設サイトを通じて募集は行っているものの、受け入れのめどは立っていません。
▽輪島市でも受け入れのめどが立っていません。
▽能登町では町内に住む人に限って26日から活動を始めました。
▽穴水町では27日から、県が募ったボランティアの受け入れを始める予定で、家の片づけやごみの廃棄などを行う予定だということです。
▽七尾市では市内に住む人に限って、軽トラックを持ち込んでボランティア活動に参加できる人を募集しています。県が募集したボランティアとともに、27日から活動を始める予定です。
▽志賀町では町内や周辺の市町に住む人から募集して、家財道具の片づけや屋根から落ちた瓦の撤去などのボランティア活動を始めています。県が募集したボランティアも27日から受け入れます。
▽中能登町では町内に住む人や勤務する人を対象に募集していて、1月30日から、被害を受けた住宅の片付けや災害ごみの搬出などを行うことにしています。
▽金沢市では、市内に住む人に限って募集し、避難所の運営などを行っているということです。希望する人は金沢市社会福祉協議会のホームページから申し込むことができます。
▽野々市市は今後のニーズを見極めて募集を検討するということです。
▽川北町ではボランティアの募集は行っていません。
▽小松市では2次避難所でのボランティアを募集しています。

 

非常に重要被災者支援制度一覧2024/01/23
生活再建・利用できる支援策は/家の修理・解体、支援金…多岐で要件(利用条件)複雑
https://www.asahi.com/articles/ASS1K3VC7S1JULZU00B.html
朝日新聞2024/01/22付
能登半島地震で被災した人の生活再建を支えるために、さまざまな経済的支援策が用意されている。しかし、そのメニューは多岐にわたり、要件も複雑だ。避難生活のなかで全体を把握するのは簡単ではない。防災士でもある弁護士が、これらの支援情報のポイントや注意点を「瓦版」にまとめ、ウェブサイトで公開した。「現地で配布、掲示してもらえたら」と活用を呼びかける。

 

「瓦版」を作ったのは、静岡市の永野海弁護士。東日本大震災後に福島県の避難所で相談対応した経験をふまえ「被災者支援情報さぽーとぺーじ(ひさぽ)」を開設している。瓦版はひさぽhttp://naganokai.com/hisapoで公開されており、内容を音声で読み上げる動画もある。永野弁護士は「あきらめず支援制度を確認してほしい」と話す

 

瓦版でピックアップされている支援策の一つが、壊れた家屋などの解体・撤去が公費負担になる「公費解体」だ。災害廃棄物対策としての施策で、対象は原則「全壊」だが、能登半島地震が「特定非常災害」に指定されたことなどから、今回は「半壊」以上に拡大された。家屋に加えて一定規模以下の倉庫や事務所も対象になる。

 

住宅に大きな被害を受けたとき、被災者生活再建支援法が適用された地域では「基礎支援金」(最大100万円)「加算支援金」(最大200万円)が受けられる。長期避難を余儀なくされていると認定された場合も対象になる。お金の使い道は住宅関連に限らない(注:基礎支援金/加算支援金の使い道は自由)。

 

自宅を修理する場合の補助としては、災害救助法に基づく応急修理制度がある。限度額は準半壊なら34.3万円以内、半壊以上で70.6万円以内となる。注意点もあり、この制度を使うと、修理期間終了後には仮設住宅を利用できなくなる(注:修理したら仮設住宅を出なければならない)。そのため永野弁護士は「修理しても結果として住み続けるのが難しくなる場合もあり、どちらの制度を使うか(仮設か修理か)、慎重に検討してほしい」とアドバイスする。

 

さまざまな支援制度は、住んでいる自治体や住宅被害の程度、所得などによっては対象にならない場合もある。利用については自治体に事前に相談、確認することが必要だ。このほか、雇用、税や社会保障、教育関係まで含めた幅広い支援策をまとめたパンフレット「被災者支援に関する各種制度の概要」を内閣府がウェブサイトで公開している。

 

瓦版第1号(令和6年1月21日改訂版)
http://naganokai.com/wp-content/uploads/2024/01/noto6kawaraban-2-1.pdf
瓦版第2号
http://naganokai.com/wp-content/uploads/2024/01/noto6kawaraban2.pdf
内閣府パンフレット「被災者支援に関する各種制度の概要」
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/kakusyuseido_tsuujou.pdf

 

(私から補足)
緊急時の避難生活では誰もが心身ともに疲労困憊し、デマも流れるため、避難先で正しい情報を必要な時に受け取ることは難しく、情報の整理と蓄積は平時こそ大事と言えます。今回、静岡県の弁護士の先生が「現時点での支援策一覧」を作成し無料公開してくださいました。ぜひ各位でダウンロード・印刷なさってください。政府(内閣府)が作成したパンフレットも合わせてご覧ください。

社会の維持に奮闘する、縁の下の力持ち/名も無き英雄たちの話
輪島市、燃える家庭ごみ収集15日から再開へ2024/01/17
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20240114/3020018110.html
NHKニュース2024/01/14付
輪島市は地震の発生以降、見合わせていた家庭ごみの収集について、15日から生ごみなど燃えるごみに限って再開することにしています。輪島市では、今回の地震で、市内にあるごみ焼却施設の安全確認ができず使えなくなっているため、家庭ごみの収集を見合わせていて、自宅で避難している被災者などがごみを出せない状況が続いています。

 

こうした中、輪島市は、衛生状態の悪化も懸念されるとして、金沢市など他の自治体の協力を得て、15日から燃えるごみに限って家庭ごみの収集を再開することにしました。ただ、焼却炉が稼働できず、ごみを処理できない状況は依然として続いているため、市は、悪臭の原因になる生ごみなどのごみを優先し、紙類などは後回しにしてほしいと呼びかけています。輪島市環境対策課は「燃えるごみ以外のごみの収集もしくは災害ごみの収集に関しては、なるべく早い段階で知らせて、生活環境の改善につなげていければと考えている」と話しています。

 

(私から補足/おかげさま)
上記の報道を目にしたとき、私は収集員の方々が集まるだろうかと思いました。元来凍える寒さの中の、辛い職務の上、このたびわが身も等しく被災され、家や近しい人を失った方も多いのではと思ったからです。いくら行政が笛吹けど踊らず、旗振れど兵は動かずとなっても、仕方のないことかもしれないと思いました。しかし翌15日のTVニュースで、係員の方々が「普段通りに」山積みのゴミ袋を回収してゆく御姿を見ました。心から安堵するとともに、わが身を顧みず黙々と職務を遂行する名もなき英雄たちに、私も深くこうべを垂れたいと思いました病院、消防団、焼き場、介護施設、会社…注意深く報道を見ると、わが国には、このような立派な方々が、それぞれの持ち場で、社会の維持に奮闘されていることが分かります。この場を借りて申し上げます。「おかげさまで、ありがとうございます」。

ペットを「名誉乗客(准乗客)」とすることの是非/法律と道徳と契約と他の乗員乗客の権利との衝突
スターフライヤー「ペット同伴」国内線全路線に拡大2024/01/15
ヤフーニュース2024/01/15付
北九州市に本社を置く航空会社スターフライヤーは、15日から小型の犬や猫を客室に持ち込めるサービスを国内線全路線に拡大しました。スターフライヤーによりますと、ペット持ち込みサービスは、ペットと旅行を楽しみたい飼い主のニーズに応えようと2022年3月に始まりました。
これまでは北九州-羽田線限定のサービスでしたが15日からは国内線全ての路線で持ち込むことができます料金は片道1匹5万円で、持ち込めるペットは既定のケージに入る小型の犬と猫のみです。ケージは一番後ろの席の窓際に固定され、飼い主は横に座ることができます

 

国の指針(法令)では、ペットは手荷物扱いで緊急時は持ち出し禁止とされており、スターフライヤーも指針に従った運用としています(注:つまり、緊急時は傍にいるペットを「見殺し」にすることになる。飼い主が取り乱して避難指示に従わず、いつか他の乗員乗客の生命と財産まで奪う事態が起りはしないだろうか)

 

(AIによるコメントまとめ)
[1]ペットと一緒に飛行することは、緊急時のリスクや他の乗客への配慮(騒音・アレルギー等)から見て問題がある。
[2]ペットと一緒に飛行することは、飼い主にとっては喜ばしいことであり、選択の自由がある

 

(ユーザーのコメント)
[1]客室に持ち込んでも、万一の時は「手荷物」目の前に居るのに連れて逃げられないなら、トラブルは目に見えてる。揉めてる間にも他人の命が脅かされる。更に目の前にいるのに、連れて逃げられなかった時の飼い主のメンタルは、ペットが荷室にいて諦めざるを得ない時よりも遥かにダメージが大きいだろう。

 

[2]飼い主さんには良いことなのかもしれないけれど、アレルギーもちには辛いし鳴き声や生理現象の問題はどうなのだろう…ニオイとか…。万が一の事故の際、絶対にペットを優先する人もいそうだし、ひと悶着ありそう。トラブル回避のためにも、個人的にはスターフライヤーは敬遠します。絶対に乗せないで。と言っているわけではなく、ペットのためにも、そして他の利用者の為にも…何が一番良いことなのか一人一人が考えるべきだと思います。

問「日本が被災すると日本円の価値は当然下がる。〇か×か」 今までは「×」だったが、2024年能登地震から「〇」となった/戻すのが難しいなら適応するしかない2024/01/12
「普通の通貨」になった日本円
ヤフーニュース2024/01/11付(みずほ銀行チーフエコノミストによるコラム/一部補足)
能登半島地震発生から10日目となる1月11日時点ドル/円相場は年末の141円割れから145円付近へ、約+3.5%上昇(円が下落)していますこれまでの円は地震が起きても、津波が来ても、原子力発電所が事故を起こしても、またミサイルが近海に撃ち込まれても「リスクオフの円買い」「安全資産としての円買い」が発生してきました(注:普通の通貨なら国内で被害があれば当然円安に/価値が下がるが、円は日本で震災等被害が起こると逆に円高に/価値が上がる特殊な通貨だった)

 

背景は色々あるでしょうが、やはり「需給構造の変化」が、どう考えても関係があると思います。「今後の円安は構造的要因を疑った方が良い」という趣旨でコラムを最初に書かせて頂いたのが21年2月、今の円安局面が始まる1か月前でした。これに対しては構造的円安を懸念するのは尚早、煽っているなど、ご批判も相応に頂いた記憶があります。しかし、今や、現時点でその主張が正しかったと証明されたわけではないものの「円安は構造的」という論陣はかなり味方が増えたようにも感じます。昨年来、方々で情報発信させて頂いている国際収支を中心とした分析も、政官財を問わず、色々な方々からレクチャーをお願いされるようになりました。

 

そして、今回、能登地震後の円相場の動きを見て、改めて「円は変わってしまったんだな」との思いを確認しました。議論すべき論点は沢山ありますが、象徴的には貿易赤字が定着したことの影響はやはり大きいものだと思われます。日本は過去10年余りで貿易赤字国としての地位が定着しました。為替予約に伴うリーズ・ラグズがあることを踏まえ、貿易収支を2007~2011年までの5年累積、2019~2023年までの5年累積(正確には12月分未発表のため4年11か月分累積)で比較すると、前者が約+20兆円であるのに対し、後者は約-33兆円です。これはもう「別の通貨」でしょう。

 

地震発生直後となる1月1日の「ブルームバーグ」では『短期的に円高に振れる可能性』と題した報道が見られました。未だ「危ないことがあれば円高(注:リスクオフの円買い)」という思いを持つ市場参加者(及び専門家)が相応に残っている状況を知るという意味で非常に興味深いものがありました。

 

2011年3月11日の東日本大震災直後は「日本の損害保険会社が支払いに備えて外貨資産を崩す(注:円を調達するためにドル売りする/円高になる)」という思惑が働き、実際に円相場は急伸(円高に大きく振れる)しました。とはいえ、2011年3月の対外証券投資を投資家部門別に確認すれば、同時期に損害保険会社が外貨建て資産を処分していたという事実はありません。それどころか統計上は対外証券投資を売り越していました(注:実際は逆にドルを買っていた/保険会社は円安になるはずの行動をしていた)それでも円高になったのは当時の日本がまだ辛うじて貿易黒字国として余韻が残っており、東京外国為替市場において輸出企業のオーダー「実需の円買い」があったからではないか(注:輸出企業など実需勢の円買いオーダーが保険会社など投機筋のドル買いオーダーを上回った)と筆者は整理しますが、もはやそうしたフローは現在、見る影もありません。拠って立つフローが無いわけですから「震災で円高」にはなりません。需給環境という点に照らせば、2011年と2024年の円は「別の通貨」であり、「震災で円高」は歴史的事実として一旦忘れた方が良いでしょう。

 

貿易収支だけではなく、経常収支も見ておきましょう。実は2011年当時より現在の方が黒字額は大きくなっています。これは円転需要が3分の1程度しか見込めない(注:ドルから円に替えない)第一次所得収支黒字の拡大が寄与した結果です。具体的に数字を見ましょう。経常黒字に関し、2007~11年累積では約+83兆円であったのに対し、2019~23年累積(正確には11~12月分未発表のため4年10か月分累積)では約+85兆円でした。しかし、第一次所得収支黒字の円転割合を調整した筆者試算のキャッシュフロー(CF)ベース経常収支で比較すると、2007~11年累積では約+26兆円であったのに対し、2019~23年累積(正確には11~12月分未発表のため4年10か月分累積)では約-3兆円でした(注:見た目だけ黒字)。貿易収支で見ても、CFベース経常収支で見ても、2011年3月の経験を根拠に「短期的には円高になる」という見解の無謀さがよく分かるのではないでしょうか。

 

次に、対外純資産の観点から言えることを紹介したいと思います。歴史的に円が安全資産と呼ばれてきた最大の理由の1つが「日本は世界最大の対外純資産国だから」というものでした「世界最大の対外純資産国」ということは、言い換えれば「世界で最も外貨建て資産を持っている国」なので、いざとなれば自国通貨を防衛する余力が潤沢にあるということになります。なので、円は安全、という理屈です。こうした考え方自体は筋が通っており、間違いとは言えません。しかし、もはや状況は変わっています結論から言えば、対外純資産残高の数字だけ膨らんでも、その中身を見る限り、円を防衛する力は弱まっていると考えた方が良い、というのがかねて筆者が述べていることです。危機時に円買いを促してきた「世界最大の対外純資産国」という印籠はもう昔ほどの効力を持っていません。以下でその理由を明示します。

 

まず、財務省『本邦対外資産負債残高の状況』によれば、2022年末時点で日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高は418兆6285億円であり、統計上は32年連続、「世界最大の対外純資産国」のステータスを維持しています。問題は対外純資産残高という全体の数字よりもその中身です。今や世界最大を誇る日本の対外純資産の半分以上(54.6%)が「直接投資」であり、統計開始以来の最高を更新し続けています。片や、歴史的に最大の構成項目であった「証券投資」は年々存在感が小さくなっており、2022年末時点では17.5%と1999年以来、23年ぶりの低水準でした。結果、直接投資と証券投資の比率は37.1%ポイントと経験の無い水準まで乖離(かいり)しています。これは為替相場を語る上で非常に重要な事実です。

 

対外証券投資であればリスクオフムードの高まりに応じてレパトリ(本国回帰)が期待されるものの、対外直接投資はそうはいかないからです。投資家が危機を感じて海外有価証券を売る(外貨売り・円買いする)ことはあっても、事業法人が買収した海外企業を売るには相応の議論と時間を要するでしょう。そもそも買収した海外企業を売る、という経営判断に至ることもないかもしれません。要するに、日本の対外純資産が世界最大であることは32年間不変ですが、その中で「売られたまま戻ってこない円」の割合は確実に上昇しているという事実があるように思えます。それが「安全資産としての円買い」や「リスクオフの円買い」がなくなってしまったことの理由と筆者は考えます。これらはもちろん仮説ですが、日々、様々な事業法人の方々とお話をさせて頂く経験に照らすと、この仮説はかなり真実に近いように感じています。例えば海外出張などで事業法人の方々のお話をお伺いしても、海外現地法人で稼いだ利益を外貨のまま現地に再投資するという動きは主流になっている印象があります。こうした再投資比率の上昇は国際収支統計からも計算可能です。日本(円)に戻すよりも海外において期待収益の高そうな機会を検討するというのが支配的な行動になっている状況が透けます。かかる状況下、「対外純資産は順当に増えていても、戻ってくる円の割合は低下しつつある」というのが日本の直面している実情であり、それが「リスクオフの円買い」がかつての迫力を失っている理由と考えます。こうして円は危機時に急騰するという特異性が失せ、「普通の通貨」になっているのが現状なのではないかと思います。

 

今回の地震前からその前兆は断続的にありました。例えば2022年2月のロシア・ウクライナ戦争勃発時は円高になっていません。むしろ資源価格上昇が貿易赤字をもたらすとの懸念や世界的にインフレ圧力が強まる中、「日銀だけ低金利で取り残される」との思惑が強まり、大きく円安が進みました。そこから始まった円安局面が今に至るまで続いています。2020年に入ってパンデミックが始まった時も、2023年にイスラエルとガザが武力衝突した時も、断続的に北朝鮮が飛翔体を打ち込んできた時も、円高にはなっていません。もっと言えば、過去10年、円はこれといった円高局面を経験していませんそれは日本の貿易黒字が消滅した時期(2011~12年)とほぼ符合しています。1973年の変動相場制移行後、半世紀にわたる貿易黒字の歴史があるため市場参加者の認識が急に変わるのは難しいでしょうが、パンデミック、戦争、震災といった様々な天変地異を経験する中でも結局、円高が起きなかったのが過去4年間です。

 

今後、円が「普通の通貨」になったという認識は徐々に、しかし確実に市場参加者に浸透し、「リスクオフの円買い」という相場現象については「そんなこともあったね」という1つの昔話になっていくのではないでしょうか。国難を通貨安リスクと捉えるのは普通の所作ですが、これまでの日本では殆ど見られてこなかった光景でもあります。

 

もっとも、2024年はまだ始まったばかりです。米FRBや欧ECBからの情報発信もまだ何も経験していません。為替市場において能登半島地震がいつまでも主たる材料であり続ける可能性は決して高くないでしょう。実際にFRBが利下げに向けた情報発信を強めてくれば、ドル/円相場は一旦下値(円高)を模索する時間帯を経験すると思います(注:欧米が利下げを始め、日銀がマイナス金利を解除すればいったんは円高に振れるかもしれないが、1ドル100円以下で定着するような極端な円高にはもうならないのではないか、ということかと西村は思います)。

非常に重要今はお金を!「被災直後の被災地に不用意に行かないことも支援の内」
能登半島地震/生活再建・支援に関する情報2024/01/06
ヤフー特設サイト2024/01/06時点

 

生活再建に向けて

https://news.yahoo.co.jp/pages/20240105
支援をお考えの方へ
https://news.yahoo.co.jp/pages/20240105#volunteer

 

(以下「支援をお考えの方へ」から抜粋/一部補足)

能登半島地震で被災した地域、被災した方々を支援する募金やボランティアなどに関する情報をまとめています。遠方にお住まいの方は、寄付でのご支援を。災害ボランティアへの参加を検討する際は募集状況や注意事項に十分留意してください。

 

(解説イラスト)「遠方からの支援は寄付で」「近隣での支援は災害ボランティアも。災害ボランティアは近隣の地域に限定した募集になっている場合があります。地域の募集内容を確認せず被災地を訪問することは控えましょう

 

募金について。被災地への支援は、現地に行ってボランティア活動をすることだけではありません被災地でのボランティア活動のために募金することも立派な支援活動です
(注:特設サイトには日本赤十字社石川県庁など「きちんと被災地に届く」寄付受付先が記載されています。寄付を騙って善意と個人情報をだまし取る偽サイト「義援金(ぎえんきん)詐欺」に十分ご注意ください)

 

ボランティアの募集情報について。被災地のボランティアについては、事前に最新情報を確認してください。また、募集期間や募集範囲についても石川県の公式サイトや各社会福祉協議会のページを確認してください

日本の子ども7人に1人は貧困層という事実「お小遣いでファストフード店に行ける自分は恵まれていること」「自分と気軽にファストフード店に行けない仲間もいること」に思いをはせよう2023/12/31
片山さつき氏、子ども食堂「日本では寄付が進まない」に「余裕ある市民なんていない」集まる批判、生活保護申請は前年同期比5.4%増
ヤフーニュース2023/12/30付
12月27日放送の『報道1930』(BS-TBS)のメインテーマは、自民党の政治資金パーティー裏金問題だった。これに関連して「子ども食堂」が取り上げられ、そのなかで食堂運営者の男性が「うちはカツカツの予算です。(食材などは)何円とか、気をつけて安いほうを買っています。(裏金の)1000万円は(食堂を)何年か運営できる金額ですね」と苦笑した。これに、ゲスト出演していた自民党政調会長代理の片山さつき参院議員が「子ども食堂の予算を、我々は増やしています。まだ足りないが、日本はチャリティや寄付が進まない文化があるわけです。米国ではパックもあって、ヨーロッパは寄付をすることに税制優遇もあるわけで」と、語気を強めながら語ったが、これが大炎上している。

 

SNSには《子ども食堂に国は予算をつけた!寄付が少ない!!じゃなくて子ども食堂がいらない世の中にするのが政治家の仕事じゃないの?》《なぜ子供食堂に人が増えてるのか?今の経済状態理解してからしゃべってほしいですね。食べるのに困ってる市民が増えてるのに、寄付する余裕ある一般市民なんてほとんどいないと思うのですが、さすが片山先生、上級国民のお友達しか頭にないのですかね?》などの批判が殺到した。

 

折しも12月29日に、2023年度4~9月の生活保護(を新たに)申請した数がわかった。厚労省によると総計は12万9606件にのぼり、前年同期比で5.4%増え、コロナ禍前の2019年同期の11万4067件と比べると13.6%の増加。5月に新型コロナウイルスが5類になり、困窮者向けの支援策の多くが終了し、その返済が始まったことなどが理由にある。また、2019年に内閣府が公表した調査データによると、日本における子どもの貧困率は7人に1人ひとり親世帯では約半分にまで増加する。片山議員の『寄付文化』発言が、まるで他人事のように聞こえて、自民党への不満と批判につながったと考えられる。自分たちのためばかりでなく、未来に向けての政治をしてほしいところだ

 

(学者のコメント)
子どもの貧困率が7人に1人となっている主たる要因は、親の賃金の低さにある非正規雇用を中心として十分な収入が挙げられない稼得者はワーキングプア(working poor)、その世帯に属するまたは無業にある世帯の児童は子どもの貧困(child poverty)となる。本記事で取り上げている子ども食堂は、これら状態にある子どもに食の支援、居場所の提供等を行う活動であり、その財源は寄付や公的支援等により運営されている。子どもの貧困解決に寄与する自主性、無償性、先駆性のある意義ある活動として高く評価されてよいしかし、そのことにより子どもの貧困が解決するわけではない解決方策として、先ずは人並みの生活が可能な賃金の支給、また賃金の不足分を補填する手当等の所得保障等である。そして子ども食堂に賛同・寄付を推進することを容易にする税制の環境整備である。(明大教授)

 

(オーサーのコメント)
[1]子どもの貧困率はむしろ近年下がっています。しかし、これは貧困な子どもが減ったのではなく、高所得でなければそもそも子を持つことどころか結婚もできなくなっているからです。そして最大の問題は、自分が苦労したような人生を再生産したくないと若者自身が絶望していることです。もっといえば、この20年間婚姻数と出生数が激減しているのも、中間層の減少のみであり、20年前の氷河期時代あたりから20代の若者に対する雇用や経済環境の悪化を素通りしてきたツケがあらわれているといえます。今困っている子どもたちのための子ども食堂の予算を付けることは良いことですが、政治家が本来考えるべきことは目先のことだけではなく、ましてや、政治家個人の利害や次の選挙のことではなく、20年後、30年後を見据えた国民の生活そのものへの安心の提供ではないでしょうか

 

[2]寄付の控除率が認定NPO法人でも約40%に留まっています。寄付を増やすのであれば、税制の変更が必要です。ふるさと納税も結果としては返礼品競争になっていますが、返礼品なしの寄附(ガバメントクラウドファンディング)も広がってきました。「育て上げネット」でも、夜の居場所を若者に作るための寄附を、ふるさと納税で募っていますが、返礼品がないからこそ選んでくださるひともいます財政の厳しい自治体にとって、寄付は地域課題を解決するためのモデルを作る予算の代替になってきていますもし、寄付が進まない認識であれば寄付税制を余裕のあるひとたちに訴えるのであれば、課題解決のためのモデル作りを前面に押し出したアナウンスが必要かと思います。

 

(ユーザーのコメント)
[1]子ども食堂関連のお話を伺う度に違和感があります。そもそも子ども食堂なるものが必要となるような社会に問題があり、本来はこのようなものが必要ない生活を考えるのが政治なのではないかと思います。中央にしても地方の政治家にしても、子ども食堂の創設や運営支援に関わると美談や実績のように誇らしげにSNSなどでアピールしますが、それは違うように思います。

 

[2]給与を上げることワークシェアのバランスも苦しい日本。地方は一人の給与を上げるかワークシェアでワーカーに人数を維持していくか、究極の選択をしなければならない。少子化が進む中でさらに厳しくなる。解決は好景気くらいしか無いと思う。小手先の少子化対策では希望が持てない。政府は景気対策に絞って雇用維持を意識して欲しい

 

[3]キリスト教であれ、イスラム教であれ、喜捨の概念は根強いし、金持ちが天の国に入るのはラクダが針の穴を通るよりも難しいという言葉もあるから。もっとも、従業員を物凄い酷使してそれで大きな収益をあげて、その一部を寄附して店舗の目立つ所に感謝状張り出すのも偽善なのですが…逆に本当に立派な方の中には目立たないように地道な支援をなさっておられる方も確実にいらっしゃいますあれこれ雄弁な国会議員の先生もキックバックで得た収益の一部でも介護施設なり子供食堂でも寄附すればまだ救いがあるのに。ミッキーとか堀右衛門とか中抜きの竹平蔵さんとか、地道に子供食堂に大金寄附とか、そういう罪滅ぼしは…ないか。
 

法律に従って選ばれた人は(たとえ自らの意に添わなくても)法律に従う義務がある/来年「独裁者=無法者」が「偉大な国の元首(アメリカ人が好んで使うフレーズ)」に選ばれる可能性がある2023/12/27 
「第二次トランプ政権」というリスクシナリオ
ヤフーファイナンス2023/12/07付(一部加筆)
トランプ氏「私が2024年の大統領選挙で勝利した場合、初日だけ独裁者になる初日に大統領権限を行使してメキシコとの国境を閉鎖し、石油掘削を拡大する(石油を国産だけで賄う=雇用を創出する他国の顔色を窺わなくて済むようにする)」

 

2024年11月の米国大統領選挙では、トランプ第45代米大統領がバイデン第46代米大統領に勝利して、トランプ第47代米大統領が誕生する可能性がやや高まりつつある「第2次トランプ政権」では、第1次政権での「米国第一主義(アメリカ・ファースト主義)」の実現が推進されることが見込まれており、そのリスクシナリオを検証しておきたい。

 

1.孤立主義への懸念
第2次トランプ政権では「アメリカ・ファースト」重視により、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退、または欧州同盟諸国からの米軍撤退措置の可能性が警戒されている。米国のNATO脱退の可能性は、欧州諸国の独自の兵器開発、核兵器保有の増加、防衛力強化措置などに繋がることになる。ロシアとウクライナの戦争に関しては、ウクライナへの軍事的支援の停止、ロシア軍による占領地を現状凍結したままの即時停戦に向けたロシア・ウクライナ間調停工作が警戒されている。また、米国が欧州から撤退するということは、中東や極東でも同様の米軍撤退の可能性が高まることになるすなわち、中東や極東の地政学リスクが高まることになる。(米軍が日本から撤退した場合、中国が台湾を侵攻するにあたって「補給基地」をつぶす目的から尖閣や石垣島など離島に止まらず日本本土への攻撃を行う可能性がある)。

 

2.反自由貿易主義への懸念
国内産業保護の観点から、欧州、日本、韓国などの同盟諸国を含むあらゆる国からの輸入品に自動的に10%の関税を課す選択肢が検討されている。中国に対しては、国家安全保障に関わる中国高度先端分野への米側技術流出・投資や中国側からの対米企業投資に対する厳しい制裁措置が検討されている。

 

3.国家運営(悪夢の4年間)への懸念
英国有力誌「エコノミスト」によると、第2次トランプ政権の政策立案の主な担い手として浮上しているのが、ブルック・ロリンズ女史と、ワシントンで弁護士事務所を構えるポール・ダンズ氏の2人らしい。ロリンズ女史は、トランプ大統領の在任期間中、ホワイトハウスで「国内政策会議」を主宰するなど、重要な役割を担ってきた。トランプ氏が2020年大統領選で敗退した後はただちに、2024年トランプ再選戦略を見据えたシンクタンク「America First Policy Institute」(AFPI)を立ち上げている。一方ダンズ氏も、トランプ政権時代に連邦政府人事局首席補佐官としてホワイトハウス・スタッフの選定・登用に重要な役割を果たしてきており、現在は、ワシントンの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」で次期共和党政権発足に備えた「2025年政権移行プロジェクト」部長の要職にある。(米国でも「それ誰?」という感じであろう。第一次政権では曲がりなりにも実績のある大物たちが政権運営に参加したが、そのほとんどと袂を分かった今、トランプ氏にはちゃんとした手駒が残っていない政権を取っても国家を運営できるのだろうか日本にも大使すら送れないのではないか)。

 

日銀、19日会合で「完全なる現状維持」来年1月での政策変更も疑問符のオマケ付き/植田総裁の「年末から年始にチャレンジング」とは「政策変更を年末年始にチャレンジ」という意味ではなく「春闘の結果が出るまで政策変更せず年末年始はじっと我慢する」ことだった?!2023/12/20
持続的な物価上昇、植田総裁「確度は高まってきている」好循環実現には「なお見極め必要」
読売新聞2023/12/19付(一部補足)
日本銀行の植田和男総裁は19日、金融政策決定会合後の記者会見を開いた。(マイナス金利解除にあたって)目標とする賃金上昇を伴った持続的・安定的な物価上昇の実現については、「確度は引き続き少しずつ高まってきている」と説明した。一方、賃金と物価がともに上がる「好循環」の実現に関しては「なお見極めていく必要がある」と述べた今月7日に国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことに関しては、「今後の仕事の取り組み姿勢一般について問われたので(総裁任期)2年目にかかわるので一段と気を引き締めて、というつもりで発言した」と語った。日銀は19日の会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度(上限の目途1%)に操作する金融緩和策「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」の維持を決めた

 

(SMBC日興証券のコメント/一部補足)
(日銀のデータを分析すると、イレギュラーな要因を除いた)基調的なインフレ率は+0.8%程度で、(マイナス金利解除の目安とされる)2%にはまだ距離がある。また、物価と賃金の好循環は、データを分析すると、現時点で両変数の価格弾力性が小さく、お互いのフィードバックが小さい。相関も統計的に有意ではなく、データに基づいて好循環を証明できていない(日銀がマイナス金利解除の条件とする)「賃金上昇を伴う持続的・安定的な2%物価上昇の達成」の判断は、データ的には明確ではなく(日銀は達成したとはまだ言えないはずだから)、政策変更までにはなお時間がかかると考える

 

(第一生命経済研究所主席エコノミストのコメント/一部補足)
現状維持は予想通りでした。ただし一部では将来の政策指針(フォワードガイダンス)の変更を予想する声もあったので、その点において今回の「完全なる現状維持」は全ての市場参加者の想定通りだった訳ではありません。筆者もマイナス金利解除に向けた何らかの予告が声明文に盛り込まれる可能性があっても不思議ではないと考えていました(注:なお今回も声明文の結句は毎度おなじみ「必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」で変化なしだった)。さて日銀を取り巻く環境はというと、米国が2024年に利下げに動く公算が大きくなったことで、日本の長期金利が急騰してしまうリスクが低下しています。日銀としては長期金利急上昇をさほど気にすることなく「出口戦略」を実行できます。2024年の賃金上昇率がある程度見通せるようになる(春闘の結果が出る)3月、或いは4月にマイナス金利解除に踏み切る可能性が高まっているように思えます。

 

(ヤフーファイナンス2023/12/19付)
19日、円は下げ幅を拡大(円下落)会合後の植田日銀総裁の定例記者会見を終え、市場は早期政策修正の可能性は低いとの見方を強め、ドル円は144.25円、ユーロ円は157.71円、ポンド円は182.62円、NZドル円は89.75円、カナダドル円は107.68円まで一段と上昇(円が下落)している。同総裁は「出口の対応、確度の高い姿を示すことは困難」と述べたほか、1月会合での政策修正の可能性について「そんなに多くはない」と発言し「政策修正について、来月上げますということになる可能性はあまりない」との見解も示した

 

(私から補足/今度の日銀総裁もブレない)
今回の日銀の判断を私なりに推察すると、米FRB及び欧ECBは来年から利下げに入ることを示唆、日銀がマイナス金利解除を急がなくても欧米との金利差がこれ以上開くとは考えにくいので、極端に円安が進む心配は当面ないから、春闘の結果を待たずに年末年始に無理にチャレンジングする必要は無くなったと判断したのだろうと思われます。つまりチャレンジング発言の時は本当にチャレンジングするという意味だったが、米FRBが早期利下げに言及するなど状況が変わったので、心構えを言ったに過ぎないということにしたのではないでしょうか。また、声明文の結びを一言一句変えなかったのは学者(東大教授)のご出身らしく慎重/深謀遠慮(政策を縛られることを予防した?)とも思いました。

米、3連続で政策金利据え置き/これで日銀は年末は「チャレンジング」しなくて済みそう/しかし今月19日会合で「まったくの現状維持」では「元の木阿弥」になる恐れも?どう転ぶ日本円と物価高2023/12/14
円急騰、一時140円台後半/米早期利下げ観測/東京市場
時事通信2023/12/14付(一部補足)
2023年12月14日の東京外国為替市場の円相場は、一時1ドル=140円台後半に急騰した(ドル急落)。7月末以来、4カ月半ぶりの高水準。米連邦準備制度理事会(FRB)による早期の利下げ観測が台頭し、日米金利差縮小を意識した円買い・ドル売りが広がった。午後1時現在は141円40~41銭と前日比4円40銭の円高・ドル安。パウエルFRB議長は13日の記者会見で、利下げ開始時期が「視野に入っている」と発言。2024年に複数回の利下げに踏み切るとの見方が広がり、米長期金利は急低下した。市場では「米利下げ観測と日銀のマイナス金利政策の早期解除への思惑(注:下の記事のように日銀の植田総裁は7日、国会で「チャレンジング」と発言、すでにここ数日急速に円高の機運が高まっていた)が相まって、(さらに)円買いが強まった」との声が聞かれた。

 

植田チャレンジング・ショック/日銀総裁チャレンジング発言で1ドル=141円台後半に
楽天証券2023/12/08付
12月7日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時、1ドル=141円台後半を付け、8月以来約4カ月ぶりの円高ドル安水準となりました。日本銀行の植田和男総裁の7日午前の国会答弁をきっかけに大規模金融緩和政策の修正が早まるとの見方が強まり、為替相場は円高で反応しました。ただ、その後8日の東京市場では1ドル=144円台を付け、円安に揺り戻す場面も出ています。

 

為替相場に激震を走らすことになった植田氏の発言は、7日午前からの参議院財政金融委員会で立憲民主党の勝部賢志議員からの質問の最後で今後の業務全般の取り組みへの所見を尋ねられたことに対する答弁でした。植田氏は「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になるとも思っている」と発言。植田氏が「年末から来年にかけて」と時期を明確に述べたことで、今月18、19日に開かれる日銀の金融政策決定会合で、マイナス金利解除が決定されるのではないかとの観測が市場の一部で高まりました市場ではこれまでマイナス金利解除を来年4月とみる見方が優勢だったために、円高への振れ幅が大きくなりました。7日午後には岸田文雄首相と植田氏が首相官邸で面会したことも伝わり、解除前倒しの見方がさらに強まりました。8日の東京株式市場では輸出関連銘柄を中心に売られ、日経平均株価(225種)終値は前日比550円45銭安の3万2,307円86銭でした

 

植田総裁の発言の真意はどこにあるのか。元日銀職員で楽天証券の愛宕氏は「『年末から来年に一段とチャレンジングになる』というのは質疑応答の最後に脈絡がなく出てきたようにも聞こえるが、意図的な発言ではないか」と指摘します。「日銀は想定問答を準備していたが、議員から質問がなく答える場がなかったので無理やり答弁の最後にねじ込んだのではないか」と分析。年末という時期について、植田氏は9月の読売新聞のインタビューでも「(賃金と物価の好循環が自律的に回っていくかどうか)年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べており、愛宕氏は「今回の国会での発言は読売記事を上書きするものだ」とひも解きます。

 

サプライズ手法が目立った黒田東彦前総裁時代の日銀とは違い、現在の日銀は政策変更が近い場合には市場にサインを送るようなスタイルに変わりつつあると指摘した上で、最近の氷見野良三副総裁や審議委員らの講演なども含めて、「今回の植田総裁の発言はマイナス金利解除を市場に織り込ませるための情報発信の一環だ」と説明します。

 

愛宕氏はマイナス金利の解除時期について「12月の金融政策決定会合ではなくて、来年1月の会合ではないか」と見通します一方で、「マイナス金利を解除しても、さらなる利上げはしばらくできないのではないか」と述べます。日銀が金融引き締めを進めるのが難しい理由は海外情勢です。市場では、来年は米国や欧州の景気悪化が懸念されており、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)や、ECB(欧州中央銀行)が早期の利下げに転じるのではないかとの思惑が高まっています。愛宕氏は「これまでも日銀が金融政策の正常化をやっと始めた時に、米欧の景気悪化で進められなくなった歴史を繰り返してきた。日銀が米欧より周回遅れで金融引き締めをするのは難しい。日銀はマイナス金利を解除しても強い緩和策を維持する姿勢を取り続けるのではないか」と話します。

 

また、国内景気にも不安があります。内閣府が12月8日に2023年7-9月期のGDP(国内総生産)改定値を発表し、実質で速報値の年率換算2.1%減から2.9%減に下方修正しました。最新の統計での個人消費減少が要因で、需要不足が深まる形となりました。日銀が進めてきた大規模金融緩和の根拠となっているのは、政府と日銀が2013年1月に発表したデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた共同声明です。内閣府はこのデフレ脱却の条件の一つに需給ギャップがプラスになること(需要が供給力を上回ること)を挙げていますが、愛宕氏は「政府と日銀がデフレ脱却とは言いづらい状況」とみています。為替相場に関しては、米欧で金融緩和が進み、日本との金利差縮小を背景に「来年末に向けて緩やかに円高となり、1ドル=135円台まで進むのではないか。短期的にはそれよりも円高になるかもしれないが、135円台を中心としたレンジでみている」と話していました。
 

たとえ話「虎の子渡し」「猫に鰹節を預ける」には?食べてしまわないように対策を2023/12/06
親のクレカで30万円超の「投げ銭」初回だけ格安の化粧品購入…小中高生の消費トラブル増で相談相次ぐ
読売新聞2023/12/06付(抄)
小中高生が消費トラブルに巻き込まれるケースが増えている。岡山県と岡山市の両消費生活センターには、オンラインゲームの課金や化粧品の購入を巡るトラブルに関する相談が多いといい、県の担当者は「スマートフォンを使う際のルール作りなど、家庭内でも対策を講じてほしい」と呼びかけている。また、ネット上では大麻入りのお菓子等も売買され、小中高生が気軽に購入してしまうケースも増えている。岡山県消費生活センターによると、2023年4~9月の相談件数のうち、小中高生に当たる10~17才が当事者だったものは計54件で、前年同期の32件から約1.7倍増。岡山市消費生活センターへの相談件数も37件で、前年同期の27件から10件(1.4倍)増えた

 

相談の多くを占めたのがオンラインゲーム等での課金によるトラブル保護者から「子どもが家族のクレジットカードを勝手に使って課金してしまったが、契約を取り消すことができるか」などといった内容が目立つという。未成年者が保護者の承諾なく契約を結んだ場合、原則として、民法の「未成年者取消権」で契約を取り消すことができるとされる。だが、親のスマホを使ってオンラインで課金した場合は、子どもが実際に課金したかを証明することが難しいため、取り消しが認められないこともある。国民生活センターによると、小学生の子どもが親のカード情報を使って、ライブ配信アプリで配信者に送金する「投げ銭」を繰り返し、30万円以上を請求されたケースもあった。同センターは、カードの暗証番号の管理を徹底させることや、保護者のアカウントを子どもに利用させないようにする等の対策を推奨している。また、課金トラブル以外にも、インターネットなどの広告で初回は格安で購入できる化粧品を契約し、2度目から高額な代金を請求された等のトラブルもあった。成人年齢が18才に引き下げられ、悪質商法や特殊詐欺などの消費者被害が広がることが懸念されている。

 

子どもがゲームで成人だと、うそを入力して課金してしまった…どうしたらいい?
ファイナンシャルフィールド2023/11/30付(抄/一部補足)
オンラインゲームで課金をする際、年齢確認がされ、年齢によって課金の上限額が設定されている場合があります。成年であれば制限がありません。好きなゲームであれば、欲しいアイテムは絶対に手に入れたいと思うのは、子供も大人も同じですもし、子どもが「成人している」と、うそを入力して課金してしまった場合、取り消すことができるのでしょうか。子どもが親に内緒で課金してしまうトラブルを防ぐには、どうすればよいのでしょうか。

 

民法第5条には、未成年者(18才未満の子ども)が法定代理人(保護者)の承諾なしに契約を結んだ場合、契約を取り消すことができるとあります(未成年者取消権)。判断能力が不十分な未成年者を保護するためのものです。また、子どもが親の承諾を得ずに締結した契約は、子ども自身でも親でも取り消すことができます(民法120条)では、どこに「子どもが勝手にやったこと」を申し出ればよいのでしょうか。オンラインゲームでの課金は、プラットフォームのアカウントを通じて行われます。プラットフォーム事業者とは、オンラインゲームの配信や有料コンテンツの取引、課金決済を管理している事業者です。アカウントでの課金は、アカウントの所有者に請求されます。よって、課金をしたアカウントから、プラットフォーム事業者に申し出ますしかし、子どもが親のスマートフォンや家庭用ゲーム機で、親のアカウントでログインして課金決済した場合は、アカウントの所有者である親が決済したとみなされ、取り消しが難しくなります(注:子どもが勝手に課金したと証明できない)。また、プラットフォームの事業者から返金が難しい(返金を断られた)場合は、ゲーム会社の方に申し出ることもできます「子どもが、親の承諾を受けずに勝手に課金した」ことの事実確認は(ゲーム会社には)難しいため、取消が認められないことがあります

 

未成年者取消権、これはどんなケースでも取り消しできるというものではありません契約相手に「成人である」と信じさせるための詐術をした場合、また、親の同意があると偽った場合は利用できなくなります。オンラインゲームの場合、端末を使用している人が成人しているかどうか、親の同意を得たかどうかの確認ができないことから、この部分が大きな問題となります。もし、年齢確認画面で成人と偽っていると、プラットフォーム事業者やゲーム会社が子どもの課金だと判断できないので、取消や返金は難しいでしょう。ただ、詐術を用いたといえるかどうかは、(裁判では)具体的な事情を踏まえて総合的に考え、実質的な観点から判断されるとされています。困った場合、消費者ホットラインや、お住まいの地域の消費者センターに相談しましょう

 

さて、親が知らない間の子どものゲーム課金、防ぐ方法はないのでしょうか。消費生活センターに寄せられた子どものゲーム課金の相談から、以下のような問題点が見られます
●保護者の携帯、保護者アカウントでログインしたゲーム機を子どもに使わせていた。
●決済時のパスワードの設定をしていない。クレジットカードの管理が十分でない。
●決済完了メールを見落としていたため、課金に気がつかなかった。
●子ども自身にお金を使っている認識がない。
(独立行政法人国民生活センター令和3年8月12日報道発表資料より)

 

まず、オンラインゲームでの課金ルールを家族で話し合いましょう友だちやインターネットから誤った情報を得ているケースもあります。コインやアイテムに「お金を払っている」ことを認識させましょう保護者も、クレジットカードやお金を子どもが勝手に持ち出さないよう、管理を十分にしましょう。子どもに親のアカウントを使わせると、相手には親がやっているとしか見えません。課金を取り消すことが難しくなります。親のアカウントを使わせないことですペアレンタルコントロールという、親のアカウントで子どものアカウントを管理する方法もありますもし、子どもに親のスマートフォンを使わせる場合、アカウントのパスワード、決済時のパスワードの設定を確認しましょう。クレジットカードが登録済みのスマートフォンでは、パスワードの設定がないと確認されることなく即時に課金ができてしまいます。決済完了メールは、普段使用しているアドレスになっているか確認しましょう。課金に早めに気づけば、高額になることを防げます。子どもの成長とともに、少しずつ子どもが自分で判断できるようにしていくことが大切です

 

(私から補足)
家族で課金のルールを決め、ペアレンタルコントロール/子どもアカウントを利用するか、子ども専用の端末とプリペイドカードを与えて「その範囲で自由」とするのがよいかと思います。未成年者取消権の行使自体は裁判不要の強力な権利ですが、相手が返金に応じなければ裁判など紛争解決手続きとなります。そうなると相手も当然こちらの落ち度を主張するので、勝てるとは限りません。やはり予防が大事と思います。

全員にお酒を行き渡らせることができない場合、あなたならどう分けますか
「トリクルダウン」という幻想2023/11/27
ヤフーファイナンス2023/03/21付(一部編集・加筆)
1932年、米国のコメディアンで社会評論家のウィル・ロジャース(1879-1935年)がフーバー大統領の経済政策に対して「貧しい人々にお金が滴り落ちる(trickle down)ことを期待したのに、お金はすべて上位層に割り当てられた」と批判した。この否定的な意味合いをもつ「トリクルダウン」が、世界の三大経済大国である米国、中国、日本で実践され、失敗に終わっていった

 

トリクルダウン理論(trickle-down effect)とは「富める者が富めば、貧しい者にも『自然に』富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」とする経済理論である。「徐々にしたたり落ちる」という意味で、大企業や富裕層を先行して豊かにすれば、中小企業や低所得層にも(注:何もしなくても自然に)富が波及し、国民全体が豊かになるとの経済理論だ。シャンパンタワーのように、富(シャンパン)が、上から下へ流れ落ちるイメージだが、歴史的事実から「(自然には)起きえない」ことが知られている

 

.歴史的事実からの否定
■米国での実践と失敗(レーガノミクス1981〜89年)
レーガン第40代米大統領による経済政策「レーガノミクス」は、富裕層を主な対象とした大規模減税により経済を活性化し、低所得層にも効果を波及させる狙いがあった。結果としては、経済はそれ以前から続いていた下降傾向から期待されたほど上向くことはなく、膨大な「双子の経常赤字・財政赤字」という負の遺産を残した。
■中国での実践と失敗(先富論1980年代)
トウ小平中国国家主席は、「政策的に先に豊かになれる者を富ませ、彼らに落伍した者を助けさせる先に富んだ者が、貧困層を援助することで国全体として豊かになっていく」として、中国湾岸地域の経済発展を優先させた。しかし、中国湾岸部の富裕層の富が、内陸部の貧困地域を富ませることにはならなかった
■日本での実践と失敗?(アベノミクス2013〜現在?)
3本の矢(金融緩和、財政出動、構造改革)の内、構造改革としての大企業や富裕層に対する減税政策が打ち出されたが、結局、貧困層にまでしたたり落ちることはなく、実質賃金はむしろ下がった

 

.歴史的検証からの否定
■経済学者トマ・ピケティ「21世紀の資本」2013年
18世紀から21世紀初頭の300年余りの経済データを分析して、「すべての資本主義社会において、基本的に資本収益率は経済成長率より大きかった」として新自由主義者が主張するトリクルダウン効果を歴史的事実から否定した。
■OECD(経済協力開発機構)2014年12月
所得格差は経済成長を損ない、所得格差を是正すれば経済成長は活性化されるとして、トリクルダウン効果を否定した。
■国際通貨基金(IMF)2015年5月
所得上位20%階層より下位20%階層の富が増加する方が経済成長に及ぼす効果がはるかに大きいとして、トリクルダウン理論に正面から反駁する報告書を出した。
■米バイデン大統領の施政方針演説2021年4月
バイデン氏は施政方針演説で「共和党のレーガン大統領が約40年前に提唱した、企業や富裕層に減税などを実施すれば、富める者が富んで貧しい者にも「自然に」富がこぼれ落ち、経済全体が良くなるとする「トリクルダウン効果」が正しいかどうか、現在は共和党でさえ意見が割れている通り、米国でこれまで一度もうまくいっていない(間違った理論だ)」と批判した。そのうえで富裕層増税や最低賃金引き上げといった「富の再分配」策を提案した
■浜田米エール大学名誉教授の回想2023年3月
大規模な金融緩和を中心とした安倍内閣の経済政策「アベノミクス」の指南役・ブレーンだった浜田元内閣官房参与は、東京新聞とのインタビューで、大企業の収益改善を賃上げへとつなげる「トリクルダウン」を(自然には)起こせなかったことを認めた。なお在任当時はアベノミクスによってトリクルダウンが正しく起きていると錯覚していた旨を示唆した。

 

(私から補足/来年春、日本でついにトリクルダウンが起きる?!)
現在、政府は法人税を減免する代わりに賃上げを条件とすることを検討する等、必死に来春(春闘)での賃上げを促しています。下のグラスまで酒が落ちないなら、上のグラスを手に取った者(企業)に少しずつ下のグラスに垂らす(酒を分ける=給料を上げる)ように促しては(減税という餌で半強制しては)どうだろう…と岸田総理は考えているのではないでしょうか。つまり首相はアベノミクスを継承/修正して「自然には起きない」トリクルダウンを「なんとか起こそう」としているのではと私は思っています。結末は来年の4月にも明らかになるかと思います。期待を込めて「日本での実践と失敗」には「?」を付けました

重要違法・不当な公権力の行使/困窮者に「毎日役所に出頭して小銭を受け取る屈辱」を味わわせる権限を、法は公務員に与えていない2023/11/22
生活保護費を1日1000円ずつ手渡し、全額払わず/群馬・桐生市
毎日新聞2023/11/21付(一部補足)
群馬県桐生市が生活保護を受給する50代の男性に対して1日1000円ずつ生活保護費を手渡しし、全額支給していなかったとして、群馬司法書士会が荒木恵司市長宛てに21日、運用改善を求める要請書を提出した。求職活動を支給の条件とし、(毎日)ハローワークに行ったか確認するため(ハロワの)職員の印鑑が押してある書面の提示を窓口で求めていた(会の指摘を受け)市は男性に渡していなかった13万4180円を(即座に)支払った

 

同会が提出後に記者会見した。要請書によると、男性は7月26日に生活保護を申請。8月18日から受給が始まった。支給額は月額約7万円と決まったが、1日1000円を窓口で手渡しし、月に3万数千円程度しか支給していなかった10月初旬に同会に相談があり、副会長が男性と同12日に市を訪ねたところ(即座に)未支給分が支払われたという(注:担当者が違法性を認識していたという示唆)

 

男性は「1日1000円では生活が厳しい。分割の支払いも納得がいかない。病気の治療で通院もしているので、毎日ハローワークに通い詰めになるのはストレスだった」と話した。副会長は「交渉の際、一括支給するとすぐに使ってしまうので、生活指導の意味を込めて求職活動を条件に支給していたと市側から説明された」と述べ、「支給額が決められた基準を下回ることや、一定の条件を付すことは憲法と生活保護法に反している」と指摘。今後、(弁護士会に引き継いで)訴訟を検討するという。

 

生活保護は憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために一定の金額が支給される制度。年齢や居住地域など厚生労働相が定める基準で計算される最低生活費から、収入を差し引いた差額が支給される。市の担当者は、男性に支給額を全額は手渡していなかったことを認め、「分割支給に関して本人に口頭で説明し、了解してもらえたと思っていたが、理解を得られていなかったことが要請書により分かった。今後は受給者との相談や決定事項を書面化して理解を求めるなど検討していきたい」と話した。

 

花園大学の吉永教授(公的扶助論)は「生活保護費は受給者の1カ月単位の生活を保障するもので、まれに分割支給もあり得る(注:本人の了解がある場合等)が、当月末までに満額を支給するのが大原則このような対応をした市の責任は重大だ。自立した生活のための基礎的な支援なので、求職を条件にした支給などはあり得ない市のやり方は生活保護法違反の疑いがある」と指摘している

 

(私から補足/理不尽な目に遭っていい人などいない)
社会的に弱い立場にある人を自分の立場を利用していじめてやろう。というようなねじ曲がった根性の者は、どの世界にも少なからず存在します。そういう存在にならないように気を付けるべきですし、そういう存在から目を付けられたときは、遠慮なく助けを求めるべきです。そういうことをするのが市役所の公務員だったなら、行政書士/愛知県行政書士会の出番になります。ご遠慮なく、詳細をご相談ください。

「独善家は独裁者になる」厳しさは周囲を窒息させる/リーダーは適度に「いい加減」であることが大事/大海は清濁併せ呑む2023/11/21
ゼレンスキー氏「孤独な戦い」軍と不協和音
読売新聞2023/11/14付(一部補足)
ウクライナのゼレンスキー大統領と軍の間で、ロシア軍への反転攻勢をめぐって不協和音が生じているとの指摘が出ている。露占領下にある東・南部を解放する攻勢が難航する中、ゼレンスキー氏は難しいかじ取りを迫られている。

 

「我々にはしっかりとした計画がある。今年、結果を出したいゼレンスキー氏は今月8日のロイター通信のイベントで、反転攻勢について前向きな展望を強調した。この発言は、英誌エコノミストへの最近の寄稿で戦況を「塹壕戦が続いた第1次世界大戦のような膠着状態」と分析したウクライナ軍トップのザルジニー総司令官を意識したものとみられる。ウクライナのクレバ外相(ゼ氏側近)も8日、東京でのG7外相会合にオンラインで参加し「ある人が前線の情勢を『第1次世界大戦のようだ』と述べたが、それは違う」とザルジニー総司令官の発言を打ち消した

 

ゼレンスキー氏とザルジニー氏の間には、過去にも溝があると報じられたことがある。独ビルト紙は今年3月、要衝バフムトの防衛方針で両氏が衝突したと伝えた。ザルジニー氏は早期撤退を進言したが、ゼレンスキー氏は聞き入れなかったという。露軍は5月にバフムト制圧を宣言し、露軍とウクライナ軍の双方に多くの犠牲者が出た。米紙ワシントン・ポストは11日、昨年9月にロシアとドイツを結ぶ海底ガスパイプラインが爆破された事件にウクライナ軍が関与したと報じた。ゼレンスキー氏には事前に知らされていなかったという。

 

ウクライナ国内では、これまで英雄視されてきたゼレンスキー氏への批判も目立つようになっている1月に大統領府顧問を辞任したアレストビッチ氏は、ゼレンスキー氏が他人の意見を聞き入れないと主張し、SNSで「現実に目を向けず、達成できない『早期の勝利』を叫ぶ独裁者(独善家)」と批判した。キーウ国際社会学研究所が10月に発表した世論調査によると、ゼレンスキー氏への信頼度は76%(昨年5月は91%)と依然高いものの、ウクライナ政府に対しては39%(昨年5月は74%)と大きく低下した。相次ぐ汚職事件が要因とみられる。ゼレンスキー氏は今月1日に公開された米誌タイムのインタビューで「私と同じように我々の勝利を信じる人は、誰もいない」と(孤立感を)吐露した。同誌は「ゼレンスキーの孤独な戦い」とのタイトルで報じた。

泣き寝入り禁止!あきらめずに申請(請求)しよう!2023/11/17
品川労基署、業務委託フリーカメラマンの通勤中事故を労災認定
朝日新聞2023/11/15付(一部補足)
形式的にはフリーランス(注:業務委託=個人事業主)だが、実態は労働者と変わらない「偽装フリーランス」品川労働基準監督署が、都内の会社と業務委託契約を結ぶフリーカメラマンの男性(40才)通勤中に遭った交通事故を「労災(通勤災害)」と認定したことが分かった。労基署の決定は10月12日付。

 

男性によると、2020年から都内の会社と半年更新の(注:労働基準法上の労働者として扱われる雇用契約ではなく)業務委託契約を結び、同社が受注した広告写真の撮影などを担ってきた。フリーランスは自身の広い裁量で働ける一方(注:会社から指揮命令を受けない=会社と使用従属関係が無い=会社と対等関係)、労働基準法などで保護される「労働者」と扱われず、原則として労災保険などの対象にならない。しかし男性の場合、繁忙期は同社からの仕事だけで月200時間働くこともあり、他の仕事を受ける余裕は無かった(注:ほとんど「専属」の状態だった)撮影自体は自身に裁量があるが、撮影場所や時間は発注者(同社)の意向に拘束され、同社からは撮影件数に関係なく、月ごとの固定報酬が支払われたという

 

男性は2022年7月、車で現場に向かう途中(=通勤中)に後続車に追突され、頚椎ねん挫などのケガを負った品川労基署はこうした実態を踏まえ「男性にはフリーランスとしての裁量が無く、会社から細かな指揮命令を受ける(注:労働基準法上の)労働者だった」と判断して、労災認定したとみられる

 

男性が所属し労災申請(請求)を支援したフリーランスの編集者/カメラマン等が加盟する労働組合(注:フリーランスは労働基準法上の労働者ではないが、労働組合を結成/加入できる)「ユニオン出版ネットワーク」の杉村さん(71才)は労基署が労働実態を丁寧に聞き取った結果だ。偽装フリーランスの救済につながる大きな成果だ」と話した。

学ぶよろこび、自主夜間中学/退職した先生方、大府市でもぜひ開いて2023/11/14
公立夜間中学に通えぬ人の受け皿に「誰もが学べる」自主夜間中学
朝日新聞2023/06/26付(一部加筆)
自治体が義務教育の未修了者(未卒業者)らを対象に開く「公立夜間中学」公立夜間中学には入学条件がある。義務教育が未修了か十分な教育を受けていないこと、公立夜中の所在地の市町村内に自宅か職場があること、週5日通えること…。これに対して「自主夜間中学」は学びたい人は誰でも入学できる(注:学校というよりは大人向けの塾といえる)。2022年の文部科学省の調査では全国に47校ある。

京都市の76才の女性Sさんは、週2回、バスと地下鉄で1時間かけて、自主夜間中学「いいあす京都」に通う。Sさんは九州出身。14才で関西に出て働き、中学は卒業していなかった。68才から4年間、京都市立の公立夜間中学に通って卒業、定時制高校に進学した。しかし、数学の勉強についていけず、中退。中学の数学から学び直そうと公立夜間中学に問い合わせたが、すでに卒業しているため戻れないと言われた。中退した定時制高校の教員に相談すると、「誰でも学べる」自主夜間中学の「いいあす京都」のチラシをくれた。以来Sさんは週2回、2時間あまり、苦手の数学を教わる。「学校の勉強って、さっささっさと前へ行くけど、ここでは1対1で教えてくれる」

 

いいあす京都の代表、川端さん(61)は元中学教師。Sさんも通った京都市立夜間中学の教頭として定年退職した。自主夜間中学を立ち上げたきっかけは退職した4か月後の2022年8月、退職後に勤める団体が開いた集会で会った30代の女性の訴えだった。女性は数年前に京都市立夜間中学への入学を申し込んだが断られたと川端さんに話した。女性は中学は不登校だったが卒業扱いとされ、その後に定時制高校を卒業していた。川端さん自身が女性の入学申込を断ったわけではなかったが、他の入学希望者に「条件に合わない」と回答した経験があった。「気づかんうちに、彼女のような人の学びの場を奪ってたんや…」その日のうちに、自主夜間中学の立ち上げを教員仲間に相談した。活動場所には、退職後に勤める団体が入居する京都府立センターの会議室を借りた。スタッフは教員仲間や市民団体に声をかけた。2022年10月(注:女性との出会いから2か月弱での立ち上げ。情熱とスピードに驚く)、初の準備会には30人が集まった。件の女性も出席し、「公立には入れない私のような人たちのために、こんな場を作ってくださって、ありがとうございます」とあいさつした。そして今年(2023年)1月からプレ開校、件の女性を含む4人の生徒が学習を始め、女性は苦手な英語や数学を教わった。買い物の場面を想定した割引の計算に取り組み、「そうか、わかった!」と笑顔を見せた。5月末の開校式には約100人が出席。外国籍の人や、通信制高校等で十分な教育を受けなかった人など、公立夜間中学の入学条件からもれた人たちから、入学相談が相次ぐ川端さんは「学習に困る人がこれだけいる事実を、多くの人に知ってもらいたい。その受け皿となる教室があることも」と話す

 

文部科学省は2026年までに全都道府県と政令指定市に公立夜間中学を1校以上設ける目標を掲げ、名古屋市でも笹島等で設立準備が進む。しかし圧倒的に数が少なく、入学条件もある為、公立夜間中学が無い/条件が合わず通えない人たちにとって、自主夜間中学が受け皿となってきたただ、各地の自主夜間中学の運営は厳しい。生徒はたくさんいても授業料を塾のように取ることは出来ず、会場の家賃を払うのにも窮するところが多い。札幌市で1990年から活動する自主夜間中「札幌遠友塾」は市との長い交渉の結果、2009年から市立中学の教室を借りて、週1回70人に勉強を教える。市は2022年4月、公立夜間中学を開校。公立夜間中からは教諭を、自主夜間中「遠友塾」からはスタッフが相互に授業の支援に加わるなど、連携が進む。遠友塾の創立メンバーの工藤さん(74才)は「公立夜間と自主夜間は車の両輪。連携を深めることで、より多くの人を学びの場へつなげることが出来る」と話す。
 

愛知県大府市共和町3-1-6

​行政書士西村伸事務所

電話0562-46-4467

9:00-17:00 (土日祝定休)

 

>>無料相談室

bottom of page